戦場ではマーマレード・ジャムを口にしない奴から死ぬ。
選ぶポイント
マーマレードジャムは「果皮が入っているジャム」のことなのでレモンやグレープフルーツなどオレンジに限らないのだが、私の辞書の「マーマレード」の項に「オレンジのジャム」と載っているので、この定義に従う。
マーマレードジャムで重要なのは苦味である。苦ければ苦いほどよいものと決まっている。苦みのないマーマレードジャムを好む人間に限って大事な場面で逃げ出す。
苦味に重要なのはオレンジピールの苦さと、量である。極論を言えばオレンジピールだけのもはやジャムではないものがある意味優れていると言えるが、一定のラインを超えると食べにくさが加速度的に増大し、かえって体験を悪化させる。
つまり、優秀なマーマレード・ジャムは、食べにくさの限界のラインを超えないようにオレンジピールの量を最大化するというチキンレースの勝者であるといえる。
Tiptree Tawny Orange Marmalade
Tawny の方が通常より「甘さ控えめ」なのでこちらを選んだ。
ピールはいい感じに苦い。だが、単位ジャムあたりのピール量が期待したほどではなかった。
MACKAYS The Dundee Marmalade
最近食べてないので味を忘れた。今のところ最優秀である。
MACKAYSはウイスキー、シャンパン、ヴィンテージなど、マーマレードジャムのバリエーションに優れていることで知られる。
ヴィンテージが一番苦かった気がするが、どれもおいしい。
St.Dalfour Orange Marmalade
パッケージからして明らかに苦くなさそうなのでまだ食べていない。
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Bonne Maman Orange Marmalade
同上。試すにせよ一度買ってしまったら350g近くを食べきらなければならないという点が二の足を踏ませる。
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成城石井 果実60%のオレンジマーマレード
ピールというより果肉で満たされている。期待外れだった。
アヲハタ 55 オレンジマーマレード
私は国産メーカーのマーマレードを信用していない。なぜなら、今まで食べたものがほぼ苦くなかったからだ。「苦味」「本格」を謳っている商品ですら海外の普通のマーマレードジャムの足元にも及ばない。どうやら日本人が苦いジャムという概念を理解できないために、不満を漏らし、悪態をつき、結果として棚から苦みのあるマーマレードは消えていったのだろう。
しかし、このアヲハタは創業者がイギリスにてオレンジマーマレードに感銘を受けて創業し、最初の商品もオレンジマーマレードという、大変好感の持てる会社である。
それゆえに、怖いのだ。およそ90年の時を経て、日本人の舌の好みに合わせるために、マーマレードの魂ともいえる苦味を、他の日本メーカーのように捨て去ってしまったのではないか――。
しかし、いつかはアヲハタと向き合う時が来るだろう。オレンジマーマレードを愛した創業者の魂(ソウル)が受け継がれているのか、この舌で確かめなければならない。
それが、日本でマーマレードと共に暮らす者の宿命なのだ。